経済・政治・国際

2016年1月19日 (火)

2016年1月の北朝鮮の軍事的動きが意味するもの(メモ)


1 北朝鮮の核及びミサイル技術の進展


  北朝鮮は、2016年1月6日、突如核実験を行い、これを水爆実験と発表した。
  これまで地下核実験が2006年、2009年、2013年と3度行われてきたが、今回の発表では、水爆の実験を行ったというものであり、関係者は嫌が応でも注目せざるを得ない状況となった。米国をはじめとする情報機関の分析では水爆ではなかったとの評価が一般的のようだが、4回目の実験でもあり、技術者としては、単なる政治的ショーではなく実験を通じて自らの技術実証を図るのは当然のことであり、いずれにせよ核爆弾の技術力が高まっていることは間違いない。
  特に、小型化、そして爆発の効率化を図るための各種実証が行われたのは明らかである。今回の発表で、核爆弾の進化とともに注目しなければならないのは、運搬能力の向上という点である。


2 本当に注目しなければならないのは潜水艦からの発射能力の向上


  これまで、陸上発射型の弾道ミサイル発射実験については、随時報道され、また、その射程の長距離化が明らかになってきている。北朝鮮から米国本土を狙える能力が備わってきたことは明らかだが、今回、本当に注目しなければならないポイントは、潜水艦から発射されるミサイル実験の映像が発表されているという点である。  
  昨年の5月に行われた潜水艦からの発射試験と格段に角度が異なって垂直になって発射された映像が発表されている。  
  「成功」という言葉には、どの点をとって成功というのか、実験当事者が何を目的に実験を行ったかということがある。水中から空中に発射したという点では「成功」と言えるし、垂直発射したという点でも「成功」であろう。もちろん、その後の物理的飛行や飛行していくためのプログラムの構築などについては、まだまだかもしれないが、昨年発表された映像と比較しても明らかに異なることは確かだ。

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        昨年発表された発射映像

 

  Image22_2
       2016年1月発表の発射映像
 


 3 潜水艦からの発射の意味するもの

  潜水艦は隠密性という点で最大の能力を発揮する。海上交通路の寸断などを行うのに最適な装備品であるが、と同時に核兵器の運搬という点でも、見つかることなく行動できるという利点を最大限に発揮できる。
  核兵器の運搬という点について言えば、潜水艦がプラットフォームになりSLBM(Submarine Launched Ballistic Missile)と呼ばれる潜水艦発射型弾道ミサイルに搭載して、相手国に近い位置に移動して発射し攻撃することができることになる。
   潜水艦の探知は極めて難しく、一度見失えば、特異な行動を行わなければその姿を確認することはほぼできないと考えてよい。
   これはすなわち、こうした技術が進展すれば、我が国への太平洋側からの北朝鮮の核弾頭の脅威に対処することを真剣に考えなければならなくなってくるということなのである。
   余談であるが、潜水艦の行動はあまり世の中に知られていない。知りたくても、長期間潜航するために全くわからないというのが正しいかもしれない。潜水艦乗りの生活は行動中、絶えず静粛でなければならないことや、空気や水、食料などの極めて悪い環境の中での生活ゆえに本当に頭の下がる仕事であり、我が国防衛を考える上でこの上ない財産・価値ある能力である。このことは敵方にとっても同様であり、だからこそ北朝鮮の動きについては、警戒の気持ちを緩めてはならないのである。
  より相手に脅威を与え、そして実利性、効率性を考えるのであれば、地上発射の弾道ミサイルの開発・整備もさることながら、潜水艦及び潜水艦発射の能力向上・整備を図ることを考えるのではないだろうか?



4 我が国の弾道ミサイル防衛体制


  我が国は、2004(平成16年度から弾道ミサイル防衛(BMDBallistic Missile Defense)システムの整備を開始している。それに先立ち、海上配備型弾道ミサイル防衛システムの日米共同技術研究も行われ、同時に、弾道ミサイル防衛のコンセプトが確立されているが、我が国はイージス艦による広域の弾道ミサイル防衛能力と、PAC3ミサイルによる拠点的な弾道ミサイル防衛能力の2層による弾道ミサイル防衛の考え方を構築している。
  そのために、弾道ミサイルを探知するレーダーサイト(FPS-5、FPS-3改(一部FPS-7))もほぼ日本海側に配置されており、基本的には西側(北朝鮮側)からの脅威を監視する態勢となっている。
   筆者も在職当時、弾道ミサイル防衛に係る政策決定に携わったが、当時から太平洋側からの脅威をどうするのかという点を論点の一つとして指摘する者はいたものの、今ある危機、即ち北朝鮮の本土からの弾道ミサイル攻撃に「効率的に」対処するという点から、イージス艦については、日本海に配置し、また、レーダーサイトについては日本海側を重視した整備が優先されてきたという側面がある。


5 我が国の防衛体制への影響(検証すべき諸点) 

  今後の防衛体制を考える上でどのような点を検証することが必要となるのか。
  現時点で直ちに変更したり、強化するということは必要ないにせよ、これまで行ってきた事業や計画を検証し、潜水艦発射の弾道ミサイルの脅威も念頭において整備を行っていくことを念頭に置くことが必要になろう。
  ここでは、検証のポイントのみ記しておきたい。
 ①  安全保障全般の観点から、
   ア 日米間の共同(対処面、技術研究の促進、進化を含む)
   イ 外交上の配慮(近隣諸国)
 ②  防衛体制の観点から、
   ア 弾道ミサイル防衛のコンセプト
     2層型(広域:海上配備型、拠点:PAC3)の考え方を変える必要はあるか?広域防衛について、陸上配備型の防衛システム(例えばTHAADの導入)を考慮する必要はあるか?PAC3の防衛区域について変更の必要ないか?
   イ 太平洋側のレーダーサイトについてのミサイル防衛能力付与の促進
   ウ 潜水艦対処能力として、対潜哨戒能力の向上(P1航空機整備の促進や水上艦艇等の能力向上)
   エ 事態対処能力向上のために、訓練、事態対処計画等への配慮
 ③  財政上の観点から
   上記各種考慮について、費用対効果はどうか


6 終わりに

   現在、様々な形でマルチの外交上の交渉が行われ、北朝鮮の行動を止めるための努力が行われることになっているが、カギはやはり中国との関係であろう。
    北朝鮮の経済状況は決して悪くないと報道されており、これも中国との関係でそのような好状況が生じているのが現実だと思われる。経済的な制裁も含めた措置が取られることになろうが、核開発、ミサイル開発がさらに進展し、我が国への脅威が益々深刻なものとならないようまずは取り組むことになるのであろう。
  と同時に、万が一の場合の備え(防衛体制の構築)も必要である。
  考えてみれば、我が国に太平洋側から脅威を与えることになるのは北朝鮮だけではない。
  既に中国がいわゆる第一列島線を超えて活動を始めているのは周知の事実であり、目に見えず情報も公表もされていないが、中国の潜水艦が太平洋側を含む我が国近海で活動しているのは明白である。
  北朝鮮の技術進歩に対応した防衛体制を構築することは北朝鮮のみならず、中国への対応という点でも必要なことであり、今後の防衛体制を考える上での一つの視点となることになると考える。
                                                                  (了)

 

 

2015年4月24日 (金)

山形県における平成の市町村合併問題について書きました!

こんにちは。梅津庸成です。

山形県におけるいわゆる「平成の市町村大合併」について、昭和の大合併を振り返りながら、将来への示唆について書きました。

労働界における取組を中心に、当時関係した方々にヒアリングをし、また、資料を集めて分析したものですが、「消滅可能性のある都市」などが云々される中で、将来さらにあり得る合併問題を見据え、考えを述べさせていただきました。

字数等が限られており、細かい部分まで書ききれていませんが、ご一読いただき、コメント等いただければ幸いです。

なお、この論文は、公益財団法人連合総合生活開発研究所と一般社団法人山形県経済社会研究所の共同研究として行われたプロジェクトの一部です。

地方創生が本格化しますが、過去に山形県において先達が行った地域活動について分析評価がなされており、将来への示唆に富むものとなっていると思います。

(オーラルヒストリーとで言うべきものとなっており、地域の歴史として残すべき重要な史料となるものと考えます。)

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2015年1月24日 (土)

社会福祉法人課税問題について書きました!

社会福祉法人は障がい者や高齢者、保育園などの運営主体として重要な役割を担ってきたという歴史的・社会的経緯から、法人課税がなされていません。しかし、昨年、企業減税を行う際の財源として、社会福祉法人への課税問題が政府・与党で取り上げられました。
一連の議論と動向についてとりまとめましたので、ご一読頂ければと思います。(山形県の社会経済2014に掲載)社団法人や株式会社等との比較についても記述していますので、参考にしていただければと思います。
昨年末、諸経済事情を踏まえて消費税10%への移行が延期され、総選挙が行われましたが、昨年末までに決まる予定であった本件課税問題についても、決定が延期になったようです。引き続きの議論が行われ、近いうちに結論が出ると思われますが、少子高齢化の中で益々社会保障問題の重要性が増してくる中で、それを担う中心となる社会福祉法人の在り方が問われていることを認識しながら、本問題が正しい議論と判断で結論づけられることを期待したいと思います。
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